矢野顕子さとがえるコンサート2012

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卓越したモノマネは、いわば口寄せなのかもしれない。
忌野清志郎として「ひとつだけ」をアッコちゃんとデュエットする清水ミチコを見て、そんな風に感じた。

年末恒例になってすでに5年以上経つ「矢野顕子さとがえるコンサート」に行ってきた。今年はまさかの「清水ミチコとともに」…彼女の物真似の上手さは知っていたものの、正直ちょっとどうかなあ、他にゲストはいるのかなあと思っていました。なので、会場に入って、ふたつのグランドピアノが向かい合わせて置かれているのに驚く。アッコちゃんと並べていいくらいに弾けるっての?

序盤はアッコちゃんひとり。いつものようにホロホロと弾きながら、歌いながら、おしゃべりしながらの数曲。ふわりふらりと心地よい。そして清水ミチコを呼び込んで、歌い始めた「丘を越えて」、2コーラス目に入ったところで目が丸くなった。…おんなじ声!ふたりだけどひとりでハモっているような。流石にピアノのタッチは全然違うから聞き分けられるけれど、同時に歌われるとどっちがどっちやらもう。アッコちゃん特有のフニャリとしたファルセットもお手のもの。いやこれは驚いた。ワンフレーズ毎に驚きと感動(と笑い)が入り交じる不思議な空間ができ上がっていて驚く。

聞けば清水さんはもう40年来(!)の矢野顕子ファン、歌声だけでなくピアノの癖までも含んだ「完コピ」をやりこなすほどのマニアぶりだそう。はー、どうりで。森山良子になって「やもり」の曲をやったり、「デビュー当時の松任谷由実vs最近の松任谷由実(三度目のアンコール版)」をふたりでやったり、キャッキャした雰囲気がとても楽しい時間であった。(このふたりと偶然新幹線に乗り合わせた水道橋博士は、さぞかし楽しかったろうと思う)

アンコールの一番最後、イントロでやる曲はすぐにわかったのだけど、2フレーズ目で「楽しいことは他にもある」を歌い出した瞬間に鳥肌が立った。清志郎だ! 彼がこの歌を演ってるのを見たことはないし、まあそもそも彼の音楽にどっぷり漬かっていたわけでもない。でも、さっきまでと同じように座ってる清水ミチコが、まるきり清志郎のように見えた。「悲しい気分のときもボクのコトすぐに呼び出しておくれよ、ねえお願い」ってね。(「ボク」で聞くのも初めてだ、そういえば)

いやすごい。やあすごい。なんかすごいものを見た。毎としそうだけど、終演後ほんとうにそれしか言ってなかった。帰りしなNHKホールから一番近い(たぶん)唐そばに寄って行くのも、すっかり御馴染みのコース。いつも2,3人アッコちゃん帰りの人がいて、隣のテーブルと「ラーメン食べたいのアレはいったい何ラーメンなのか」と盛り上がったりしたこともあったっけ。今年もしっかり長居して、あしたはクリームシチューにするかなんて考えながら帰路につく。年の瀬も差し迫ってきた気分。

▸ 矢野顕子 & 忌野清志郎 – ひとつだけ Fuji Rock ’02

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